
もくじ
はじめに
魚を食べるとき、自然と「これは白身だな」「これは赤身だな」と分類していますが、その違いは一体どこから来ているのでしょうか?
味や色の違いはもちろんのこと、実は魚の“筋肉の種類”や“泳ぎ方”“酸素の使い方”にまで深く関係しています。
本記事では、白身魚と赤身魚の構造的な違いと、それが味や栄養にどう影響するのかを、わかりやすく解説いたします。
第1章:赤身魚と白身魚の違いは「筋肉」にあった
●見た目だけじゃない「赤」と「白」の意味
私たちが魚を選ぶとき、自然と「赤身か白身か」を意識しています。
マグロやカツオは赤身、タイやヒラメは白身――この区別は単に身の色の違いだけではなく、魚の生態や筋肉の構造に深く関係しています。
赤身と白身、それぞれの色は、筋肉中に含まれる“ミオグロビン”というタンパク質の量の違いによって生まれます。
ミオグロビンは酸素を蓄える機能があり、多く含まれるほど身が赤く見えるのです。
●赤身魚:持久力型の「長距離ランナー」
赤身魚の代表例は、マグロ・カツオ・サバなど。
これらの魚は、常に海の中を泳ぎ続ける回遊魚であり、広い海域を移動して餌を探すために、**長時間泳ぎ続けるための筋肉=赤筋(持久筋)**を多く持っています。
赤筋にはミオグロビンが豊富に含まれており、筋肉内で酸素を効率よく利用することができます。
このため、持久力に優れ、一定の速度で長時間泳ぎ続けることが可能になります。
赤身の色は、この高濃度のミオグロビンに由来するものです。
●白身魚:瞬発力型の「短距離スプリンター」
一方で白身魚、たとえばタイ・ヒラメ・カレイ・アジ・キスなどは、普段は海底や岩陰でじっとしていて、
必要なときだけ素早く動いて逃げたり、獲物を捕らえたりする魚です。
これらの魚は、瞬間的に強い力を出す白筋(速筋)が中心となって構成されています。
白筋はミオグロビンの量が少ないため、見た目が白くなります。
つまり、白身魚は「スタミナはないが瞬発力に優れた短距離走者」。
この筋肉構造が、白身の柔らかくきめ細かい食感にもつながっています。
●“中間”の魚も存在する?
ちなみに、魚の中には赤と白の中間に位置するようなものも存在します。
たとえばブリやサワラ、カンパチなどは、赤身ほどミオグロビンは多くないが、白身魚よりは回遊性が高いため、
「赤白の中間」「淡赤身」と呼ばれることもあります。
このような魚は、脂のりとあっさり感のバランスが良く、幅広い層に好まれる傾向があります。
●まとめ:筋肉の違いが魚の個性を作る
赤身魚と白身魚の違いは、単なる色の違いではありません。
魚がどのように泳ぎ、どのように生きているかという“生活の違い”が筋肉に現れ、それが身の色として現れるのです。
赤身はスタミナ型の筋肉、白身は瞬発型の筋肉。
この生態の違いを知ることで、魚を見る目も変わり、食べるときの楽しみがより深まります。
第2章:赤と白の筋肉の役割と魚の生活スタイル
●赤筋と白筋、それぞれの特徴
魚の筋肉は大きく分けて赤筋(あかきん)と白筋(しろきん)の2種類に分類されます。
これらは見た目の色だけでなく、働きやエネルギーの使い方にも違いがあります。
- 赤筋(持久筋):
→ 酸素を使ってエネルギーを生み出す「有酸素運動型」。
→ 持続力に優れ、長時間泳ぎ続けることが可能。
→ ミオグロビンが多く、色が赤く見える。 - 白筋(速筋):
→ 酸素を使わず瞬間的にエネルギーを生む「無酸素運動型」。
→ 短時間で強い力を発揮するが、すぐに疲れる。
→ ミオグロビンが少なく、白っぽく見える。
このように、赤筋は「長く泳ぐため」、白筋は「速く泳ぐため」に特化しているのです。
●回遊魚と定着魚、それぞれの生き方
魚の生活スタイルを大きく分けると、「回遊魚」と「定着魚」に分類できます。
それぞれの筋肉の使い方と密接に関わっています。
●回遊魚(例:マグロ・カツオ・サバなど)
- 広大な海を常に泳ぎながら移動する
- 赤筋を多く持ち、持久力に優れた体づくりが必要
- 群れを成して泳ぐことで、効率的に餌を探す
回遊魚は水温や食物の変化に合わせて数千kmを移動する種もあり、そのための筋肉と代謝能力が発達しています。
この動きの激しさが、赤身のしっかりとした食感や、血合いの強い風味を生んでいるのです。
●定着魚(例:タイ・ヒラメ・カレイ・メバルなど)
- 岩場や砂地など限られた範囲で生活する
- 普段はじっとしていて、必要なときだけ素早く動く
- 白筋が中心で、瞬発的な動作に優れた体構造
定着魚は、敵から身を隠したり、待ち伏せで獲物を捕らえたりするスタイルが多く、
普段はあまり動かない分、筋肉の発達も局所的になります。
●“動き方”が味わいを変える
魚の泳ぎ方と筋肉の使い方は、そのまま食味にも影響します。
- 赤身魚は筋繊維がしっかりしており、噛みごたえのある食感と、鉄分を含んだ濃厚な味わいが特徴です。
- 白身魚は繊維が細かく柔らかいため、あっさりとして上品な味わいに仕上がります。
また、白身魚は煮ても焼いてもクセが少なく、調味料の風味がよく馴染みます。
一方で赤身魚は、刺身や寿司にすると魚本来の個性が際立ち、食べ応えのある一品になります。
●“食性”ともリンクする筋肉構造
さらに、赤身と白身の違いは魚の食性(どんな餌を食べるか)にも関係しています。
- 回遊魚は小魚やプランクトンを探して泳ぎ回り、常にエネルギーを使うため赤筋中心。
- 定着魚は海底の甲殻類や貝類などを静かに捕食し、瞬発力で仕留めるため白筋中心。
つまり、「どこに住み、何を食べ、どう動くか」が、筋肉の性質に影響し、それが身の色と味に現れるのです。
第3章:味・栄養・調理法の違いとは?食べ比べて知る楽しさ
●赤身魚の味わいと特徴
赤身魚は、筋肉に多くのミオグロビンやヘモグロビンを含んでいるため、鉄分を感じさせる濃厚な味わいが特徴です。
特にマグロやカツオなどは、脂の乗り具合によって味が劇的に変わります。
- 赤身部分:さっぱりとしながらも力強い旨味
- 中トロ・大トロ:脂の甘みと濃厚さが調和した贅沢な味わい
赤身魚は、刺身や寿司、ヅケ(漬け)などの生食に向いており、酸味や香味野菜と組み合わせることで風味がさらに際立ちます。
また、カツオのたたきのように香ばしく表面を焼く調理法でも美味しさが引き立ちます。
●白身魚の味わいと特徴
白身魚は、繊維が細かくて水分量が多く、しっとりとした舌触りと繊細な味わいが魅力です。
タイ、ヒラメ、カレイ、スズキなどが代表的で、どれも脂肪分は少なめであっさりとしています。
このため、白身魚は調味料や出汁との相性が良く、料理の幅が非常に広いのが特徴です。
- 刺身や昆布締めで素材の味を楽しむ
- 煮つけや塩焼きで旨味を引き出す
- 酒蒸しや椀物で出汁の風味と一体化させる
和食の中でも「上品」「丁寧」とされる調理法は、白身魚の美点を最大限に引き出すものと言えるでしょう。
●栄養面の違い
赤身魚と白身魚は、栄養成分の面でも違いがあります。
- 赤身魚:
→ 鉄分やビタミンB群が豊富。筋肉や血を作る栄養源。
→ DHA・EPAといった良質な脂肪酸も含まれ、脳や血管の健康に効果的。 - 白身魚:
→ 高たんぱく・低脂肪で消化吸収が良く、ダイエットや病後の食事に適している。
→ カルシウムやビタミンDを含む種も多く、骨や免疫に良い影響を与える。
つまり、赤身はパワー系、白身はやさしさ系の栄養バランスを持っていると言えるでしょう。
●食べ比べる楽しさと季節感
赤身と白身、それぞれの良さを知ったうえで、旬の時期に食べ比べるのも大きな楽しみです。
- 春:カツオの初ガツオ(赤身)と、桜ダイ(白身)の上品さ
- 夏:アジやサバ(赤身系)の脂のり、スズキ(白身)の涼やかさ
- 秋:戻りガツオや秋サンマの濃厚さ、カレイの煮付けの滋味
- 冬:寒ブリのトロトロ赤身、ヒラメやアンコウの冬の白身の魅力
このように、季節ごとに変わる脂の質や身の締まりを感じながら、食卓に“旬”を取り入れることができるのも魚食文化の大きな魅力です。
●どちらも味わうのが魚好きの特権
赤身か白身か――どちらが優れているということはありません。
それぞれの特徴を知ることで、食べたい場面・体調・季節に合わせて最適な選択ができるようになります。
そして何より、その違いを味わい分けられる感覚こそが、魚を楽しむ醍醐味のひとつです。
おわりに
魚を「赤身」と「白身」に分けることは、私たちにとってごく自然な習慣です。
しかし、その違いの背後には、魚たちの生き方や筋肉の構造、さらには味わいと栄養まで、深い意味が隠されています。
赤身魚は、広い海を泳ぎ続ける持久力型の魚。
その筋肉は酸素をたくさん使い、ミオグロビンを多く含むことで赤く見えます。
力強く濃厚な味わいは、魚がエネルギッシュに動き続ける結果として生まれるのです。
一方の白身魚は、瞬発力を活かして獲物を捕らえるタイプ。
じっとしていて必要なときだけ動く、そんな慎重な生活スタイルが、淡く繊細な白身の食感と味を生み出します。
どちらのタイプも、それぞれの環境に適応した結果であり、そこに「優劣」はありません。
重要なのは、その違いを知り、自分の好みやその日の体調、季節の移ろいに合わせて魚を選ぶ楽しさを知ることです。
また、赤身と白身の違いを知ることで、調理法の工夫も広がります。
赤身は刺身やヅケでその濃厚な味を、白身は煮つけや蒸し物でその繊細な舌触りを楽しむ――
魚に応じた“美味しさの引き出し方”を意識することで、食卓の満足度はぐっと高まります。
そして何より、魚を味わうという行為は、海と自然と、魚たちの生命の営みに触れる時間でもあります。
身の色の違いひとつにも、生き物の進化と知恵が詰まっている――そう考えると、一尾の魚がより尊く、愛おしく感じられるのではないでしょうか。
今度、魚を食べるときは、その色にもぜひ注目してみてください。
きっと、そこにしかない魚の物語が見えてくるはずです。
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