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はじめに
「魚の記憶力は3秒しかない」──
そんな話を聞いたことがある方、きっと多いのではないでしょうか。
なんとなく信じていたこの“都市伝説”、実は科学的には完全に否定されているのです。
実際の研究によって、魚たちには記憶力だけでなく、学習能力や空間認識力すらあることが分かってきました。
しかもその記憶、3秒どころか数日〜数か月に及ぶこともあるというから驚きです。
今回のブログでは、
- 「3秒説」のルーツと、なぜ広まったのか
- 実際の研究で明らかになった魚の記憶力
- 魚はどんなふうに覚え、どう活かしているのか?
というテーマで、魚の記憶と知能の“ホントの姿”をわかりやすく解説してまいります。
第1章 魚の記憶は3秒?その噂、どこから来たのか

「魚の記憶力は3秒しか持たない」
この話は、どこかユーモラスで、少し可愛らしい印象さえあります。
ですが、この「3秒説」は、実は科学的な根拠がない都市伝説なのです。
根拠のない“通説”として広まった3秒説
この説が広まった正確な発端ははっきりしていませんが、
1970〜80年代頃に英語圏を中心に出回ったゴールドフィッシュ(金魚)に関するジョークや比喩表現がきっかけとされています。
「金魚の記憶は3秒。だから毎回泳ぐたびに新鮮な景色を楽しんでいる」
といったフレーズは、一種の皮肉や冗談として語られていました。
しかしこの言葉が一人歩きし、
「金魚=記憶力がない」「魚=おバカ」という誤ったイメージが広がっていったのです。
科学的な裏づけはゼロ
実は、「魚の記憶は3秒しか持たない」という説に、科学的根拠は一切ありません。
どの研究論文にも、そうした結論は出ていませんし、
むしろ近年では、魚には中長期の記憶があることがさまざまな実験で確認されています。
特に、水族館や養殖、動物行動学の分野では、
- 魚が特定のエサの場所を覚えている
- 天敵が現れる場所や時間を記憶して避ける
- 複雑な迷路を記憶して移動する
といった行動が記録されており、「3秒どころではない」明確な記憶力の存在が示されているのです。
「3秒説」が信じられたくなる理由
この話がこれほどまでに浸透した背景には、いくつかの理由が考えられます。
- 魚の表情がわかりにくいため、反応や感情が読み取りづらい
- 会話もできず、犬や猫のように“かしこさ”を実感しにくい
- 水槽の中をぐるぐる泳ぐ姿が「忘れてるように見える」
こうした印象から、「魚は記憶が短い」という先入観が生まれやすかったのかもしれません。
でもそれは、魚が本当に忘れているからではなく、
人間の目にそう映っているだけだったのです。
次章では、実際の研究例を取り上げながら、
「魚が記憶していること」「どれくらい覚えているのか」を、具体的に見ていきます。
きっと、魚への見方がガラッと変わるはずです!
第2章 研究でわかった!魚はちゃんと覚えている

「魚の記憶力は3秒」という通説が、科学的に根拠がないことは前章でご紹介しました。
では、実際の魚の記憶力はどの程度あるのでしょうか?
ここでは、さまざまな実験や観察を通じて明らかになった、魚たちの“記憶する力”を見ていきましょう。
金魚はエサの時間を“数週間”記憶する
まず取り上げたいのが、もっとも身近な魚「金魚」に関する研究です。
あるカナダの大学の研究では、
金魚を音とエサで条件付け(パブロフの犬のような学習)したところ、
数週間後でも同じ音を聞いたときにエサを探す行動を取ることが確認されました。
つまり金魚は、
- 音が鳴る
- → もうすぐエサが来る
- → だからエサの場所に向かおう
という一連の流れを、数週間覚えていられるのです。
これだけでも、「3秒説」は完全に否定できますね。
ベタは“顔”を覚える!?個体識別の能力
観賞魚として人気の「ベタ」に関する研究では、
同種の個体の顔の違いを識別し、敵か味方かを判断する能力があることが報告されています。
特に、過去に争った相手に対しては攻撃的になるなど、
過去の記憶に基づいた行動の変化が見られました。
これは、「誰と接したか」を覚えている=記憶していることを意味します。
シクリッドは迷路を覚える&“ごほうび”を学ぶ
熱帯魚の一種である「シクリッド」を使った実験では、
複雑な迷路の中にエサを隠し、魚がその場所を何度も探し当てるかを調べました。
すると、
- 数回の学習で迷路の構造を覚え、
- 最短ルートでエサにたどり着けるようになり、
- 数日たってもそのルートを維持
という結果に。
また、特定の形や色と“ごほうび(エサ)”を結びつけて記憶するという実験でも、高い学習・記憶能力が認められています。
マグロや回遊魚は「数千kmの移動ルート」を覚える
海を回遊する大型魚、たとえばマグロやサケなどは、
産卵やエサを求めて、決まったルートを長距離移動します。
GPSタグなどの追跡研究からわかっているのは、
- 回遊ルートを年単位で記憶している
- 地形や水温などを手がかりにナビゲーションしている
- サケに至っては、生まれた川を数年後に正確に遡上する
といった、空間記憶・長期記憶の高さです。
これが「3秒の記憶力」でできるわけがありません。
科学の視点から見ても「魚はよく覚えている」
これらの研究はほんの一部ですが、共通して言えるのは、
- 魚は環境を記憶できる
- 仲間や敵の存在を覚えている
- 食べ物や行動パターンを学習できる
という、知性に裏づけられた記憶力を持っているということです。
次章では、こうした記憶力や学習能力が、
魚の“行動”にどう活かされているのか? 実例を交えて見ていきましょう。
魚たちの“かしこさ”をもっと深く感じられるはずです。
第3章 記憶力が魚の行動を変える?学習と適応の実例

前章では、魚に「しっかりとした記憶力がある」ことを科学的に見てきました。
では、その記憶力が実際の行動にどう影響しているのか?
魚たちは“覚えること”をどう活かして生きているのか?
この章では、そんな実例を紹介しながら、記憶が魚の暮らしにもたらす効果を探っていきます。
エサの時間・場所を覚える金魚やコイ
家庭で飼っている方にはおなじみですが、金魚やコイは**「エサの時間」や「与える人の気配」**をしっかり覚えています。
- 飼い主が近づくと集まってくる
- 決まった時間になると水面でパクパクし始める
- 餌をくれる手の動きを覚えている
これらはすべて、記憶と学習に基づいた行動です。
特に、“パブロフの犬”のような条件反射を超えて、「パターン」を覚える能力があるというのは大きな発見です。
敵を学習して回避行動をとる魚もいる
自然界では、記憶は「命を守るための武器」にもなります。
たとえば、ある研究では、
- ある刺激(たとえば光)と、天敵の出現をセットで経験した魚は、
- 次回以降、光がつくだけで“逃げる行動”を取るようになった
つまり、過去の経験を覚え、それを次の行動に活かしているのです。
これは、ただ「ビックリして逃げた」のではなく、「学習して予測した」反応と言えるでしょう。
群れの中での“記憶”の役割も
群れをつくって泳ぐ魚たちには、「仲間の記憶」が行動に影響を与えているという研究もあります。
- 一部の魚だけが道順を知っている(経験者)
- 他の魚はその行動を見て学び、次回から同じルートをたどる
- 群れ全体の“学習効率”が上がる
このような現象は、「社会的学習」と呼ばれ、魚にも観察されています。
つまり魚は、個体だけでなく“群れとして記憶や行動を共有する”力も持っているのです。
記憶力で“個性”が生まれる
実は、記憶力や学習能力の違いが魚の“性格”や“個性”にもつながっているという説もあります。
- よく学ぶ魚 → 新しい環境でもすぐに適応し、エサを見つける
- 慎重な魚 → 敵を長く覚えて避ける
- 活発な魚 → ルートを早く覚えて移動距離を広げる
こうした差異は、“記憶力=生き方の幅”を広げる力だと言えるでしょう。
魚は“かしこく生きるために”覚えている
魚の記憶力は、ただ「覚える」だけでなく、
- エサを効率よくとる
- 敵を避けて身を守る
- 仲間と協調して行動する
- 新しい環境に適応する
といった、“生き抜くための知恵”としてしっかりと役立っています。
最初に「魚の記憶は3秒」と言われたときと比べて、
今、魚の見方が少し変わってきたのではないでしょうか?
次の「おわりに」では、今回の内容をやさしく振り返りながら、
魚の記憶力を知ることの意味についてまとめてまいります。
おわりに 魚の知性を知ると、見方が変わる
「魚の記憶は3秒しかもたない」
そんな“思い込み”から始まった今回のお話ですが、
実際には、魚たちは驚くほどしっかりと物事を覚え、学び、行動に活かしていることがわかってきました。
金魚がエサの時間や音を覚え、
ベタが相手の顔を識別し、
回遊魚が何千キロも旅して戻ってくる――
どれも、私たちが想像する以上の記憶力と知性に支えられた行動です。
魚は“無表情で感情がなさそう”と思われがちですが、
彼らは水中という過酷な環境で生き抜くために、必要なことをちゃんと覚えて、賢く暮らしているのです。
この事実を知った今、
水槽で泳ぐ魚も、海で跳ねる魚も、少し違って見えてくるのではないでしょうか。
「この魚、覚えてるのかな?」
「学んでるのかも?」
そんな風に思いながら眺めると、魚たちとの距離がぐっと縮まる気がします。
自然の中で静かに生きる魚たち。
その小さな体の中には、私たちがまだ知らない“知恵と記憶”の世界が広がっているのです。
また次回も、魚にまつわるちょっと面白くて、学びのあるお話をお届けします。
どうぞお楽しみに。
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