魚豆知識

魚の名前に隠された秘密10選!なぜ“タチウオ”は立って泳ぐ?

はじめに

魚の名前には、見た目や生態、歴史や地名など、さまざまな由来が隠されています。
私たちが何気なく呼んでいるその魚の名前、実はとても奥深い意味を持っているかもしれません。
例えば「タチウオ」は、本当に“立って泳ぐ”のか?「アイナメ」には“愛”が込められている?――そんな疑問をひもとくと、魚の世界がもっと身近に、もっと楽しく見えてくるはずです。

本記事では、知っているようで知らない“魚の名前の由来”に迫り、その秘密を5種ピックアップしてご紹介します。

第1章:タチウオ――名前の通り立って泳ぐ?

●「タチウオ」の名前の由来

「タチウオ」という名前には、主に二つの説が存在します。

  1. 太刀に似た体形から
    タチウオの体は非常に細長く、銀白色に輝いています。この姿が日本の伝統的な刀剣である「太刀」に似ていることから、「太刀魚」と名付けられたとされています 。
  2. 立ち泳ぎする習性から
    タチウオは、獲物を待ち伏せる際や休息時に、体を垂直にして水中に漂うことがあります。この姿勢が「立っている」ように見えることから、「立ち魚」と呼ばれるようになったとも考えられています 。

これらの説はどちらも有力であり、タチウオの特徴を的確に表現しています。


●実際に立って泳ぐのか?

タチウオは、通常は他の魚と同様に横向きに泳ぎます。しかし、特定の状況下では、体を垂直にして水中に漂うことがあります。これは、獲物を待ち伏せる際や休息時に見られる行動であり、常に立って泳いでいるわけではありません 。


●英語名と国際的な呼び名

タチウオは、その体形から英語では「Cutlassfish(カトラスフィッシュ)」や「Scabbardfish(スカバードフィッシュ)」と呼ばれています。これらの名前も、タチウオの細長く銀白色の体が、刀やその鞘に似ていることに由来しています 。


●まとめ

「タチウオ」という名前は、その体形が日本の刀「太刀」に似ていることや、特定の状況下で立ち泳ぎする習性から名付けられたと考えられています。これらの特徴は、タチウオの生態や行動を的確に表現しており、名前の由来として非常に興味深いものです。

第2章:アイナメ――「愛」がつく珍しい魚の名前

●「アイナメ」の名に隠されたロマン

魚の名前には、見た目や生態に由来するものが多い中、「アイナメ」は非常に珍しく“愛”の文字を含んでいます。
この名前の由来にはいくつかの説があり、古くから人々に親しまれてきたことがうかがえます。

もっとも有力な説のひとつが、「相並(あいなみ)」から転じたというものです。
これは、産卵期にオスとメスが寄り添って並ぶように泳ぐ習性から来ており、
“仲睦まじい”様子が「相並ぶ魚=アイナメ」となったとされます。
この「相並」が「愛」に転じて漢字表記されるようになったのは、後世のことですが、
日本人の感性として「夫婦愛・家族愛」に重ねられたことが読み取れます。


●産卵期に見られる“夫婦愛”のような行動

実際、アイナメは産卵期になると、オスがメスを誘導して産卵させ、自ら卵を守るという習性を持っています。
この習性がとてもユニークで、産卵後もオスは卵に外敵が近づかないように守り続け、
場合によっては数週間にわたり餌を食べずに卵を見張り続けることもあります。

このような姿が、あたかも“献身的な父親”のように見え、
「愛で包まれた魚」というイメージが強まり、「愛魚」「愛慕魚」といった表記も文献には見られるようになりました。


●食味の良さと親しみやすさも“愛される”理由

アイナメはその味の良さからも、昔から「愛される魚」として全国各地で親しまれてきました。
白身でクセが少なく、煮付け・焼き物・揚げ物などどんな調理法でも美味しくいただける万能選手です。
特に冬場は身に脂がのり、寒アイナメとして市場でも高値がつくことがあります。

また、内湾や岩礁帯など比較的浅場に生息し、釣りでも人気があるため、
「釣って楽しい、食べて美味しい魚」として、釣り人にもファンが多いのも特徴です。


●地方名にも残る「愛」のイメージ

アイナメには地域によってさまざまな別名がありますが、
中には「アブラメ」「アブラナメ」「ナメタ」など、優しげで親しみを込めたような響きの名前も多く、
これもまた“愛着”の表れといえるかもしれません。

東北地方では、特に煮付け用の魚としてアイナメが重宝され、
家庭の味として根付いていることから、「アイナメ=あたたかい家庭の魚」という印象を持つ人も少なくありません。


●まとめ

「アイナメ」という名前は、その習性から“仲の良い夫婦魚”とされ、
人間の感性に重ねて「愛」の文字があてられたと考えられています。
単なる言葉遊びではなく、魚の行動をしっかり観察し、意味を込めて名付けた先人の知恵が詰まっているのです。

第3章:カワハギ――“皮を剝ぐ”そのままの命名

●名前は料理法から来ていた!

「カワハギ」という魚の名前は、文字通り“皮を剝ぐ魚”という意味に由来しています。
その理由は、カワハギの非常に硬くて分厚い皮にあります。
この皮をそのままでは食べられないため、料理の際には必ず手でベリッと皮を剝いてから調理するのが一般的です。

このインパクトの強い下処理の工程がそのまま名前に採用され、
「皮を剝ぐ=カワハギ」と呼ばれるようになったのです。


●学名や英語名にも注目

カワハギの学名は Stephanolepis cirrhifer、英語では「Thread-sail filefish」や「Leatherjacket」と呼ばれ、
いずれもその体の形状や皮の質感を表す名称が使われています。

日本語の「カワハギ」はそのものズバリ、調理上の特徴を端的に表現しており、
実用性に基づいた命名の好例といえるでしょう。


●調理してこそ光る白身の美味しさ

カワハギはその外見からは想像できないほど、上品でコクのある白身を持ち、
刺身・煮付け・唐揚げなどにして非常に美味な魚です。

特に「肝(きも)」が珍味として人気で、冬場になると肝が大きくなり、
「肝醤油で食べるカワハギの刺身」は、通の間で絶品とされています。


第4章:メバル――目が大きい“目張る”魚

●名前の由来は“目が張っている”?

「メバル」という名前の由来は、その大きくて前に張り出した目にあります。
「目張る(めばる)」という動詞から派生して名付けられたとされ、
漢字では「眼張」や「目張」とも表記されます。

暗い海の中でも獲物を見逃さないよう、大きな目を持つことで光をとらえやすくしているのです。


●習性と釣り人に愛される理由

メバルは昼間は岩陰などに潜み、夜になると活発に活動します。
このため、夜釣りで狙う対象魚として古くから親しまれてきました。

引きが強く、釣り味も抜群な上、煮付けにして絶品の白身は家庭料理でも重宝されています。


●種類と地方名の多さも特徴

実は「メバル」は一種ではなく、「アカメバル」「シロメバル」「クロメバル」など複数の近縁種の総称でもあります。
地域によっては「ハチメ」「ガシラ」など、別の呼び名が存在し、
その土地ならではの呼称文化が根強く残っている魚でもあります。


第5章:キス――なぜ英語の“キス”?由来は意外な方向に…

●名前の由来は英語ではない!?

「キス」と聞くと英語の“kiss(キス)”を連想する方も多いかもしれませんが、
日本の魚である「キス」はまったく別の由来を持っています。

もともとは「キスゴ(鱚子)」という名前で知られ、
その語源は諸説あるものの、古語で“白い魚”を意味する「キシロコ」や「キシコ」が転じたものといわれています。

この「キスゴ」が略されて「キス」と呼ばれるようになったとされ、
“英語っぽい魚名”はまったくの偶然の一致なのです。


●姿も味も上品な夏の白身魚

キスは夏に旬を迎える白身魚で、スリムで銀白色に輝く体と繊細な味わいが特徴です。
特に天ぷらにすると絶品で、江戸前天ぷらの花形ネタとしても有名です。

釣りでも人気があり、波打ち際から狙える手軽さから、ファミリー層にも親しまれています。


●まとめ:意外な名前のルーツに驚き

「キス」は見た目も味も名前も上品で親しみやすい魚ですが、
その名前の背景には古語に由来する奥深い歴史が隠されていたのです。

おわりに

普段なにげなく口にしている魚の名前――。
その一つひとつには、姿かたち、習性、味わい、そして人と魚との関わりから生まれた深い意味や物語が込められています。

「立って泳ぐタチウオ」「愛を感じるアイナメ」「皮を剝ぐカワハギ」……。
名前を通して魚を知ることで、ただ“食べる”だけでなく、観察する楽しみや会話のきっかけにもつながります。

魚の名には、先人たちの観察力と感性が詰まっています。
その背景を知ることは、日本人の魚文化への理解を深める第一歩でもあるのです。

これから魚を買うとき、食べるとき、ぜひ名前にも注目してみてください。
きっと今まで以上に、魚が“おいしく、面白く”感じられるはずです。

名前だけじゃない、味にも“理由”がある魚を選ぶなら魚忠

魚の名前には、長年の知恵と観察が詰まっています。
そしてその魚を「どう選び、どう味わうか」――そこにもまた、大切な意味があります。

魚忠は創業70年以上、毎朝市場で熟練の目利きが選んだ魚を、職人の手で丁寧に仕立ててまいりました。
名前だけでなく“本当に美味しい理由”がある魚だけを仕入れ、お客様の食卓へお届けしています。

オンラインショップでは、調理しやすい切り身や下処理済みの干物、味噌漬けなども豊富に取り揃えております。
「この魚、どうしてこんな名前なんだろう?」そんな興味から、ぜひ一歩先の味わいをお楽しみください。

👉 魚忠公式オンラインショップはこちら

Follow me!

    -魚豆知識

    PAGE TOP