魚豆知識

変な名前の魚たち

海の中には、想像を超える生き物が無数に存在します。その中でも、特にユニークな名前を持つ魚たちは、我々に驚きと同時に、思わず笑みをもたらしてくれます。

しかし、これらの魚の名前には、ただ単に面白いというだけでなく、その由来には多くの場合、魚の特徴や生態、見た目から来ているものが多いです。時には、古い言葉や方言、地域の文化が反映されていることもあります。これらの背景を知ることで、ただ笑って終わるのではなく、その魚に対する理解が深まり、さらには海の生態系や文化についても興味が湧くかもしれません。

この記事では、名前からは想像もつかないようなユニークな魚たちをいくつかピックアップし、その名前の由来や魚の生態について探っていきます。きっと、読むうちに「こんなに面白い名前の魚がいたんだ」と驚かされることでしょう。そして、魚たちの世界に対するあなたの興味や好奇心が、一層深まるはずです。

読者の皆さんが、この記事を通じて、魚の名前の面白さだけでなく、それぞれの魚が持つ独特の魅力や海の生態系に対する理解を深め、さらに海の世界への探究心を強めるきっかけとなれば幸いです。

⒈オジサン:海の中の『おじさん』ってどんな魚?

オジサンという魚をご存知でしょうか?本当にいるの?と思うかもしれません。
実は、「オジサン」という名前の魚は実在します。この名前は、下顎から伸びる2本のヒゲが特徴的で、顔を正面から見た際におじさんに似ていることから名付けられました​。学名はParupeneus multifasciatusといい、主に日本の温暖な地域に生息し、沖縄県や鹿児島県、東京都の諸島部などでは比較的普通に見られます​​。体長は平均で25cm前後と、ウミヒゴイ属では小型に分類されますが、その美味しさから食用魚としても一定の評価を受けています。

オジサンの肉質は透明感のある白身で、クセがなく、特に皮と身の間にある脂肪には甘みがあり、おいしいとされています。ウロコは大きめで薄いため、皮付きの霜造りや、皮を引いての刺身に適していると言われています​​。また、お刺身よりも炙りにすることでさらに美味しさが引き立つとの声もあります​​。

⒉オバサン:海に潜む"おばさん"はどんな魚?

「オバサン」という名前の魚が実際にいるかというと、その名前が公式に使われているわけではありませんが、千葉県ではヨシキリザメのことを「オバサン」と呼んでいるそうです​​。ヨシキリザメはメジロザメ目・メジロザメ科に分類され、世界中の暖かい海に生息しています。体長は2~3mにもなり、人や船を襲うこともある危険なサメです。オバサンめちゃめちゃ怖いですね…。
この名前がついた理由は明確ではありませんが、漁師さんがその見た目から名付けたと言われています。

オバサンの名前の由来

「オバサン」という名前の由来については、その見た目がオバサンっぽいから、というのが一つの説です。漁師さんが名付けてそのまま広まったとされています​​。なお、このヨシキリザメを「オバサン」と呼ぶ習慣は特定の地域に限られており、全国的にそのように呼ばれているわけではない点が興味深いです。

オバサンという魚の特性

ヨシキリザメ(オバサン)は、大型でありながら世界中の暖かい海に広く分布しているサメです。そのため、千葉県など一部地域では「オバサン」という愛称で親しまれていますが、基本的には人を襲う危険なサメとして知られています。その強靭な生命力と広い生息域が、このサメを特徴づけています​​。

⒊ババア:見た目はババア、鍋にすると美味い

ババアの特徴生態

ババア、正式名称タナカゲンゲ(学名:Lycodes tanakae)はスズキ目ゲンゲ亜目ゲンゲ科に分類される魚の一種です。この魚は、魚類学者の田中茂穂にちなんで名付けられましたが、一般的には「キツネダラ」とも記述されています。体色は褐色で、体長は約90cmから1mに達することがあり、日本海やオホーツク海に生息しています。その美味しい白身は、刺身や鍋物など様々な料理法で楽しむことができます。

地方名としての『ババア』は、タナカゲンゲの独特な呼称の一つで、この名前は特に地域によって親しまれています。1m程度まで成長し、犬やキツネを思わせる顔つきが特徴的です。生息域は水深120mから870mの範囲で、主に北海道のオホーツク海や日本海沿岸、さらに朝鮮半島東岸中北部、間宮海峡、サハリン南岸や周辺のオホーツク海などに広がります。

ババアの由来

タナカゲンゲは、北海道から山口県にかけての日本海沿岸に生息している魚です。この魚は地域ごとに異なる呼び名を持つことで知られています。中でも、島根県や鳥取県では「ババア」という独特の名前で親しまれています。この呼称は地域のスーパーマーケットなどで使われることもあり、メディアで取り上げられることもあります。

「ババア」という名前の由来には複数の説がありますが、最も一般的なのは、この魚の頭部がしわくちゃで人の顔に似ており、特にお婆さんを連想させることから来ているとされています。時には親しみを込めて「ばばちゃん」と呼ばれることもあります。このような地方色豊かな呼び名は、その地域の文化や風土を反映しており、日本各地で見られる魚の名前の多様性を象徴しています。

ババアの食べ方

食用魚としてのタナカゲンゲ、特に『ババア』は、白身が滑りやすく、味わいにクセがないため、冬期の旬の時には鍋材料として特に優れています
この魚は日本海側などで主に見られ、底曳き網で捕獲されることが多いです。鳥取県岩美町では、この魚を使用した鍋料理が地域の名物となっており、少しずつ注目を集めています​​​​。
鍋がよく食べられますが、他にもフライ、唐揚げ、味噌汁にするのも美味しいそうです。

地方名『ババア』を持つタナカゲンゲは、その珍しさや美味しさから、地域によっては特別な食材として扱われ、伝統的な料理法で珍重されています。そのため、この魚は地域文化の一部として、その価値を今に伝えています。

⒋スベスベマンジュウガニ:可愛い名前、意外な正体

スベスベマンジュウガニは、日本の太平洋岸、特に千葉県から沖縄にかけてのサンゴ礁や水深100メートルまでの地域に生息しています。この小型の蟹は、動きが鈍く、逃げることも少ないため、磯遊びなどで見かける機会が多いです。平均的には甲羅の長さが3.5cmから5cm程度とされ、比較的捕まえやすいサイズです​​​​。

名前の由来

その名前の由来は、甲羅が非常にスベスベしており、饅頭のような形状をしていることから付けられました。甲羅の表面は滑らかで、色は赤褐色から紫褐色をしており、鋏の先端は黒いことが特徴です​​。

可愛い名前とは裏腹…

しかし、この可愛らしい名前に反して、スベスベマンジュウガニは猛毒を持つことで知られています。その毒は、テトロドトキシン(フグ毒)やサキシトキシン(麻痺性貝毒)など、生息地によって異なる種類の毒を持っています。毒の種類と量には地域差があり、北に分布する個体はフグ毒を、南に生息する個体はフグ毒と貝毒の両方を持つことがあります。四国地方に生息する個体の中には、両方の毒を持つ「ハイブリッド個体」も存在することが確認されています​​。

スベスベマンジュウガニの毒は、主に外殻に加えて、脚とハサミの筋肉に多く含まれており、触れただけでは中毒症状は起きませんが、口にすると非常に危険です。毒の成分は、このカニが捕食する餌に由来しているとされ、体内での合成や共生微生物の存在については、未だ解明されていない部分が多いです​​。

釣り場や磯でスベスベマンジュウガニを見かけた際には、観察するだけにして持ち帰ることは避け、特に小さなお子さんがいる場合には注意が必要です。見た目の可愛らしさとは裏腹に、触れることは安全でも、決して食べてはいけないカニであることを忘れないでください。

キタマクラ:名前が不吉な海の魚

キタマクラはフグ科に属し、インド太平洋の温暖な海域に広く分布する海水魚です。
この魚の名前の由来はその猛毒にあり、伝統的な「北枕」という言葉から来ていると言われています。
日本では福島県以南の太平洋岸から九州、伊豆諸島、琉球列島などで見られます。体長は約10~20cmと比較的小型で、特徴的な2本の暗色縦帯があります。雄は婚姻色として青紫色に輝きます。キタマクラは浅海の岩礁域や藻場に生息し、雑食性で、藻類や棘皮動物、軟体動物などを捕食します。
繁殖期は夏で、粘着性の沈性卵を産みます。筋肉と卵巣は無毒ですが、皮膚や内臓には強毒があり、食用には適していません。
釣りで捕獲した場合は、素手で触れず、軍手やタオルを使用して注意深く扱う必要があります。

まとめ

変わった名前を持つ魚たちは、そのユニークな呼称の背後に興味深い生態や由来が隠されています。例えば、キタマクラはその毒性から、「北枕」という不吉な名前がつけられました。一方、スベスベマンジュウガニやオジサンのように、外見や特徴から名付けられた魚もいます。これらの魚は、彼らが持つ独特な特性や生態系での役割を通じて、海の多様性と複雑さを教えてくれます。
水族館に行った際に名前と見た目を気にしてみると面白いかもしれません。

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