
もくじ
はじめに
スーパーのお刺身や、和食店で出てくるお造りに添えられている黄色い菊の花。
「キレイだから飾りかな?」「食べられるの?」「どうして魚に花?」――
そんな素朴な疑問を持ったことはありませんか?
実はあの菊、ただの飾りではなく、れっきとした意味と役割があるのです。
今回は、この「刺身と菊」にまつわる豆知識を中心に、
- 菊が添えられるようになった理由
- 食べられるの?使い方は?
- 菊以外の刺身の“つま”の役割
- 現代ではどう変化しているか
など、お刺身をもっと深く楽しめる小さな和食の知恵をやさしくご紹介いたします。
第1章 なぜ刺身に菊が添えられるのか?由来と意味
お刺身のパックや和食店のお造りの横に、ちょこんと添えられた黄色い食用菊。
見慣れた光景ではあるものの、「なぜ刺身に花を?」と、ふと疑問に思ったことがある方も多いのではないでしょうか。
実はこの“刺身に添える菊”には、見た目以上の意味と役割があるのです。
■ 菊には「防腐」「殺菌」の意味があった
日本では古くから、菊には薬効(くすりの効果)があると信じられてきました。
特に、抗菌作用・解毒作用があるとされ、食用としても利用されてきた歴史があります。
そのため、生もの=刺身に菊を添えることで、食中毒を予防する意味が込められていたのです。
- 菊の香り成分には微生物の繁殖を抑える力があると考えられていた
- 食中毒の心配がある夏場などは、特に重宝された
👉 昔は冷蔵設備が整っていなかったため、見た目の美しさ以上に「衛生目的」が重要だったのですね。
■ 食卓の美意識としての“彩り”
黄色は、料理において彩りを引き立てる「五色のひとつ」とされています(赤・黄・緑・白・黒)。
白身魚やまぐろなど、色合いが落ち着いた刺身に黄色を添えることで、全体が引き締まり、食欲をそそる見た目になります。
- おもてなしや宴席では、「見た目の華やかさ」=もてなしの心
- 食材を「目で味わう」という、日本の食文化の一面でもあります
👉 菊は、「美しさ」と「意味」を兼ね備えた、まさに和食らしい飾りなのです。
■ 「食用菊」としての役割
添えられているのは「小菊(こぎく)」や「阿房宮(あぼうきゅう)」などの食用専用に栽培された品種で、食べても問題ありません。
ただし、苦みや香りが強いため、そのまま食べるよりは、薬味や吸い物に散らすなどが一般的です。
■ 現代では「意味が変わりつつある」
近年では冷蔵流通が発達し、殺菌や防腐という実用面での意味合いは薄れつつあります。
一方で、菊のかわりにプラスチック製の「造花菊」が添えられることもあり、見た目の印象を保つ目的が強くなっています。
刺身に添えられる菊には、衛生・美しさ・文化的意味と、さまざまな要素が込められていたのですね。
次章では、「じゃあ実際に食べてもいいの?どんなふうに使うの?」という疑問にお応えし、
食用菊の扱い方やおいしい使い道について詳しくご紹介してまいります。
第2章 あの菊、食べられるの?正しい扱い方と使い道
お刺身についてくる黄色い菊、実はれっきとした「食用菊」です。
見た目は飾りでも、ちゃんと食べられるように栽培された花なのです。
この章では、「食べていいの?どうやって食べるの?」という疑問にお応えしながら、食用菊の扱い方や活用法をご紹介していきます。
■ 食用菊とは?
スーパーや刺身パックに添えられている菊は、「食用菊(しょくようぎく)」という専用品種で、苦みが少なく、柔らかい花びらを持っています。
代表的な品種には、
- 阿房宮(あぼうきゅう):紫がかったピンク色の花びらで、風味がよく料理にも使いやすい
- 延命楽(えんめいらく):黄色くて花びらが肉厚、苦みが控えめで香りが良い
👉 食用以外の観賞用菊には、食用に適さない農薬が使われている可能性があるため、絶対に食べないよう注意が必要です。
■ 刺身の菊はどうやって食べる?
刺身に添えられている菊は、次のような形で活用できます。
1. 花びらを散らして薬味に
- 魚の刺身やカルパッチョに少量の花びらを散らすことで、ほのかな香りと彩りを添えることができます。
2. お吸い物や茶碗蒸しに添える
- 花びらをお湯にさっとくぐらせて、吸い物や蒸し物にあしらうと風味が加わり、見た目も華やかになります。
3. 菊の酢の物・おひたし
- たくさんあるときは、さっとゆでて三杯酢や出汁で和えれば、立派な一品になります(東北地方では定番の料理)。
👉 刺身パックの小菊は少量のため、「彩り」として楽しむのがおすすめです。
■ 食べる前の下処理ポイント
- 水で軽くすすいで花粉やホコリを落とす
- 花びらだけを丁寧に摘み取る(ガクは硬くて苦みがある)
- 必要があれば熱湯で5秒ほど湯通しして、苦みをやわらげる
👉 そのまま口に入れても問題ありませんが、ひと手間加えるとより美味しく、安全に楽しめます。
黄色い菊はただの“飾り”ではなく、食材としても使える和の薬味。
ほんの少しの工夫で、いつものお刺身がぐっと上品な一皿になりますよ。
次章では、菊だけではなく、刺身のまわりに添えられている「大根のつま」「しそ」「わさび」など、“脇役”たちの役割と意味を掘り下げてまいります。
第3章 菊だけじゃない!刺身に添えられる“つま”の役割
刺身を引き立てる存在として、黄色い菊以外にもさまざまな“つま”が添えられています。
これらは見た目の彩りだけでなく、味・香り・衛生面・食べ方のガイドなど、多機能な役割を担っている大切な存在です。
ここでは代表的な“つま”の種類と、それぞれの意味をご紹介します。
■ 1. 大根のけん(つま)
刺身の下に敷かれている白く細い千切り大根は、「けん」または「つま」と呼ばれます。
【役割】
- 刺身の乾燥を防ぐ(敷いて水分を保つ)
- 口直し・味の緩衝材としても使われる
- 余った刺身と一緒に和えて食べてもOK
👉 単なる飾りではなく、「刺身を守り、美味しく食べるための工夫」でもあります。
■ 2. 青じそ(大葉)
刺身の横や下に敷かれることが多いしその葉も、実はしっかりと意味があります。
【役割】
- 抗菌作用があり、魚の鮮度を保ちやすくする
- 独特の香りがあり、刺身の臭みを和らげる
- 巻いて食べれば、味と食感にアクセントが出る
👉 実用性と風味、両方を兼ね備えた名脇役です。
■ 3. わさび・しょうが・みょうが
薬味として添えられるこれらは、味の変化をつけるだけでなく、抗菌・防腐の役割もあります。
- わさび:魚のにおいを抑え、殺菌効果もある
- しょうが:辛味と香りで口内をリセット、さっぱりと食べられる
- みょうが:季節感や香味の演出に(夏によく使われます)
👉 薬味は味の補強だけでなく、魚の鮮度と相性を考えた“選ばれた存在”なのです。
■ 4. 海藻類(わかめ・とさかのり など)
色合いを引き立てるだけでなく、ミネラル補給・食感の変化を楽しむためにも使われます。
水分が多いため、刺身に直接触れないように添えられることが多いです。
このように、“つま”や“薬味”はすべてが考え抜かれた配置と意味を持っています。
「ただの飾り」と思っていたものにも、和食ならではの細やかな気配りと知恵が込められているのですね。
次章「おわりに」では、こうした細やかな和の美意識が、食文化としてどのように生きているのかを振り返りながらまとめてまいります。
おわりに 小さな飾りに込められた、日本の美意識と知恵
お刺身に添えられた黄色い菊の花――
その存在は、見た目を美しくするだけでなく、食中毒予防や香りの演出、彩りの調和といった多くの役割を果たしていたことが分かりました。
現代では冷蔵や流通が進み、防腐目的の役割は薄れつつあるかもしれません。
しかし、菊や大根のけん、しそ、わさびなど、ひとつひとつの“つま”に込められた意味や美意識は、
今なお私たちの食卓に息づいています。
- 見た目の美しさだけではなく、機能性と心遣い
- 味を引き立て、食べやすさや安心を届ける
- 季節や素材を大切にする、日本らしい感性
次にお刺身を食べるときは、ぜひ“菊の花”に目をとめてみてください。
そこには、日本の食文化が育んできた知恵と心遣いが、そっと添えられているのです。
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