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“イカの町”に異変!函館スルメイカ不漁の真相

はじめに

北海道・函館――「イカの町」として名高く、透き通ったスルメイカの刺身はこの街を代表する味覚として知られてきました。
しかし今、そんな函館に異変が起きています。
港にイカの姿が見えない。漁獲量が年々減少し、ついには「不漁」という言葉が定着するまでに。
この異変は、地元漁業者や観光業者だけでなく、全国の食卓にも静かな波紋を広げています。

本記事では、函館のスルメイカに何が起きているのか。その背景にある海の変化、国際事情、そして私たちの食文化への影響を探ります。

第1章:函館=イカの町、なぜそう呼ばれるようになったのか?

● 函館とスルメイカの深い結びつき

北海道南部に位置する函館市は、古くから「イカの町」として知られてきました。その象徴がスルメイカです。函館の漁業は、スルメイカの豊富な漁獲量に支えられ、地元経済や食文化の中心的存在となってきました。

スルメイカは、夜間に光に集まる習性を利用した「漁火漁法」で漁獲されます。夜の海に灯る漁火は、函館の夏の風物詩としても親しまれ、多くの観光客を魅了してきました。

● スルメイカの漁獲量と経済的影響

かつて函館では、スルメイカの漁獲量が年間1万6000トンを超える年もありました。しかし、近年ではその量が激減し、2022年度の漁獲量は過去最低の317トンにまで落ち込みました。これは、10年前の約10分の1に相当します。

このような漁獲量の減少は、漁業者だけでなく、スルメイカを原料とする加工業者や飲食店、観光業者にも大きな打撃を与えています。函館の名物であるイカ刺しやイカ飯などの提供が難しくなり、観光客の満足度にも影響を及ぼしています。

● スルメイカ不漁の背景にある要因

スルメイカの不漁の原因として、以下のような要因が指摘されています。

  • 海水温の上昇:地球温暖化の影響で、スルメイカの生息域が変化し、従来の漁場から離れてしまっている可能性があります。
  • 海洋環境の変化:黒潮の蛇行やエルニーニョ現象など、海洋環境の変動がスルメイカの回遊パターンに影響を与えていると考えられています。
  • 餌となるプランクトンの減少:海の栄養塩の減少により、スルメイカの餌となるプランクトンが減少し、成長や繁殖に影響を及ぼしている可能性があります。

これらの要因が複合的に作用し、スルメイカの漁獲量減少を引き起こしていると考えられています。

● 地元の取り組みと今後の展望

函館市や漁業関係者は、スルメイカ資源の回復を目指し、さまざまな取り組みを行っています。例えば、漁獲量の管理や漁期の調整、資源保護のための研究などが進められています。

また、スルメイカに代わる新たな水産資源の開拓や、観光資源の多様化など、地域経済の再構築に向けた努力も続けられています。

第2章:函館の海に何が起きている?スルメイカ不漁の原因とは

● 史上初の「初競り中止」――漁獲量ほぼゼロの衝撃

2025年6月1日、北海道南部でスルメイカ漁が解禁されました。
しかし、11隻の漁船が出漁したにもかかわらず、漁獲量はほぼゼロ。
この異常事態により、翌2日に予定されていた函館での初競りは史上初めて中止となりました。
漁師たちは「こんなの初めてだ」「もう廃業だ」と悲鳴を上げ、地元関係者も動揺を隠せませんでした。

● 海水温の上昇とスルメイカの回遊パターンの変化

専門家によれば、スルメイカの不漁の主な原因は海水温の上昇にあるとされています。
スルメイカは水温に敏感な生物であり、海水温の変化によって生息域や回遊ルートが変わることがあります。
近年の地球温暖化の影響で、函館近海の海水温が上昇し、スルメイカが従来の漁場から離れてしまった可能性が指摘されています。

● 他の海洋生物との競合や捕食の影響

さらに、スルメイカの不漁には他の海洋生物との競合や捕食の影響も考えられます。
例えば、マグロなどの大型魚類が増加し、スルメイカを捕食することでその数が減少している可能性があります。
また、スルメイカの餌となるプランクトンの減少も影響していると考えられています。

● 漁業者への経済的打撃と地域経済への影響

スルメイカの不漁は、漁業者の収入減少だけでなく、地域経済全体にも深刻な影響を及ぼしています。
スルメイカを原料とする加工業者や飲食店、観光業者も打撃を受けており、函館の名物であるイカ料理の提供が難しくなっています。
このような状況が続けば、地域の活力が失われる恐れがあります。

第3章:観光・食文化への影響と、私たちにできること

● 観光の象徴「活イカ釣り堀」にも影響

函館朝市の名物である「活イカ釣り堀」は、観光客に人気の体験型アトラクションです。
しかし、スルメイカの不漁により、ヤリイカを代用する日も増え、営業が困難な状況が続いています。
「スルメイカが取れないと店を開けられない」と、関係者は厳しい現状を語っています 。

● 地元の食文化と加工業者への打撃

スルメイカは、函館の食文化を支える重要な食材です。
イカ刺しやイカ飯、塩辛など、地元の家庭料理や加工品に欠かせません。
しかし、不漁により原料が不足し、加工業者は海外産のイカを輸入せざるを得ない状況に追い込まれています。
円安の影響もあり、原料価格は高騰し、加工業者の経営を圧迫しています 。

● 観光業への広がる影響

函館の観光業も、スルメイカの不漁により大きな影響を受けています。
観光客は「函館といえばイカ」と期待して訪れますが、名物のイカ料理が提供できないことで、満足度の低下が懸念されています。
また、イカをテーマにしたイベントや祭りも、開催が難しくなっている状況です。

● 私たちにできること

スルメイカの不漁は、気候変動や海洋環境の変化など、複合的な要因によるものです。
私たちにできることとして、以下のような取り組みが考えられます。

  • 地元産品の消費:函館産の水産物や加工品を積極的に購入し、地元経済を支える。
  • 持続可能な漁業への理解:資源管理や漁業規制の重要性を理解し、持続可能な漁業を支援する。
  • 環境保護への意識:海洋環境の保全や気候変動対策に関心を持ち、日常生活でできる取り組みを行う。

おわりに

かつて豊かに水揚げされ、函館の名物として愛されてきたスルメイカ。
その姿が、今では“幻”と呼ばれるほどに減少している現実は、地域の文化や経済だけでなく、海の未来そのものを映し出しています。

不漁の背景には、海水温の上昇、回遊の変化、そして国際的な資源競争など、さまざまな要因が複雑に絡んでいます。
それは決して一地域の問題ではなく、私たちすべてに関係する“食と自然”の課題です。

函館のイカ文化を守るために、そして豊かな海を次世代につなげていくために。
いま私たちができることは、小さくても意味のある行動――知ること、選ぶこと、支えることです。

イカの町・函館が再び輝きを取り戻す日を信じて、私たち一人ひとりが関心を持ち続けることが、未来の一歩となるはずです。

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